平成26年度第4回ろう者学ランチトーク:井上正之先生

2014/06/01掲載

 5月28日(水)に第4回ろう者学ランチトークを開催しました。

 本学産業技術学部の井上先生にお越し頂き、「電話リレーサービス ~聴覚障害者の社会的自立のために~」についてお話し頂きました。

 井上先生は聴覚障害者の情報アクセシビリティについて研究されており、電話リレーサービスについても外国の例などを調査されています。お兄様も聴覚障害者であり、アメリカのIBMの研究所に転勤されてTRS(Telecommunications Relay Services:電話リレーサービス)という存在を知ったことがきっかけでした。お兄様の「今までずっと他人に頼らないと電話ができなかったのに、こちら(米国)に来たらTRSでなんでも自分でも出来る。涙が出た…」という言葉に驚き、電話リレーサービスの研究を始めるようになったとのことです。

 電話リレーサービスとは聴覚障害者と一般ユーザの間にオペレーターが介在し、文字~音声または手話~音声と通訳することによって聴覚障害者が全ての電話ユーザと「電話」することが可能になるシステムです。

 アメリカでは1960年代にろう者用の文字通信端末をろう者が開発したのが始まりであり、現在はVRS(Video Relay Service:ビデオリレーサービス)という手話通訳を使ったサービスが主流になっています。NTID(国立聾工科大学)やギャローデット大学に専用ブースがあり、24時間無料で電話をかけられるようになっています。

 ヨーロッパでも手話を利用したVRSが十数カ国で実施されています。アジアでも韓国やタイで近年サービスが始まり、学生からも「えー、韓国やタイも?」と驚きの声があがっていました。

 日本では技術面では問題ないが、運営費用の負担をどうするのかが課題となっています。これまでも費用面の問題で企業等がサービスを中止しており、整備がなかなか進まない状況でした。しかし昨年、日本財団が試験的にモデルプロジェクトを始めたことから、電話リレーサービスに関する動きや議論が活発になってきています。

 なぜ電話リレーサービスが必要なのかー。電話ができないことで失っているものの例として、①「時間」②「チャンス」③「命」の3点をあげられていました。井上先生自身もお子さんが夜、突然病気になったとき、電話できず、苦い経験をしたそうです。しかし、電話ができないことで失われているものを、まず聴覚障害者自身が理解していないことが多いと話して下さいました。

 最後に「日本で公的な電話リレーサービスが開始されたとき、私たち聴覚障害者は『自由』になる。その日が早く来るよう、共に頑張りましょう」と熱いメッセージを送っていました。

 おかげさまで43名の参加がありました。学生からも「手話通訳者と手話が通じなくてトラブルになったことはないのか」「オペレーターの雇用形態は?ボランティアなのか、または社員として雇われているのか」「日本財団のモデルプロジェクトが終わった後の展望は?」など鋭い質問が出て、関心の高さが伺えました。ぜひこの機会に若い世代にも積極的に使って頂き、多くの人々に電話リレーサービスに対する理解が広まることを祈っています。

 最後に日本財団からお送り頂いた電話リレーサービス・モデルプロジェクトのチラシを配布いたしました。この度はご協力頂き、心より感謝申し上げます。

 参加して下さった皆さま、ありがとうございました!!


 

 

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