平成27年度第8回ろう者学ランチトーク:佐藤太信さん&牧谷陽平さん&山本芙由美さん

2015/07/09掲載

 7月6日(月)に第8回ろう者学ランチトークが行われました。

 NPO法人日本ASL協会のご協力を頂き、日本財団聴覚障害者海外奨学金事業の第11期奨学生として、来月米国に出発される佐藤太信さん、牧谷陽平さん、山本芙由美さんの3名にお越し頂き、これまでの経験や留学後の目標についてお話し頂きました。

 おかげさまで教職員・学生合わせて31名の参加がありました。

 山本芙由美さん(写真上)の講演テーマは「多様な“性”を生きる ろうLGBTの立場から」でした。山本さんは、Deaf-LGBT-Centerの代表を務めておられます。LGBTとは性的マイノリティの人々のことを指し、L(レズビアン)、G(ゲイ)B(バイセクシュアル)、T(トランスジェンダー)の頭文字をつなげた略語です。電通総研の調査では、日本の全体人口のうち、7.6%がLGBTと言われています。ろう者にも同じようにLGBTの人々がいます。しかし、情報が全く得られない、手話で相談できるところがない、またLGBTの人々に対する差別的手話表現も普通に使われているなど、様々な問題を抱えています。そこで山本さんは、気持ちよく使える手話、また正しいLGBTの手話用語を確定して発信したり、ろう者が安心して相談できる窓口を設けたり、サポートブックなどを発行したりなど、ろうLGBTに対する理解を広めるための活動をしてこられました。アメリカではろうLGBTに対する心理的サポートやろうLGBT支援専門家の育成について学ぶ予定です。帰国後は、日本そしてアジアにおけるろうLGBT支援専門家として活動し、LGBTに関する政策提言に向けてのサポートもしていきたいと話してくださいました。

 佐藤太信さん(写真中央)の講演テーマは「新たなことへの挑戦」でした。佐藤さんは10年、民間企業に勤めていましたが、情報保障が十分ではなく、通訳をつけてほしいとお願いしてもなかなか理解してもらえませんでした。そこで、聴覚障害者情報センターなどに相談に行った経験があります。しかし、相談員自身も福祉などの知識はあっても、ろう者に対するメンタルヘルスやカウンセリングまでの知識がなく、対応も不十分だったといいます。自分としては、心の悩みをケアしてほしかったと振り返ります。また、会社内での人間関係に悩み、うつを発症する人も多い現状も目にしました。その上で、自分なりの能力を身につけたいという思いから、退職し、大学や大学院で心理学を学び、臨床心理士の資格を取得します。しかし、資格取得においても実習先にろう者だからという理由で断られたり、ロールプレイも対象が聴者で、満足のいくロールプレイの実践ができなかったりと、悔しい思いをしたといいます。アメリカでは、ろう者に対する臨床心理学を学び直すとともに、実習も含めどのような学習環境が整備されているのか、またろう者の臨床心理士がどのように活躍しているのか直に見たいそうです。そして帰国後は、日本においてろう者が安心して相談できる相談支援体制を確立させていきたいとのことです。

 牧谷陽平さん(写真下)の講演テーマは、「生まれてから今まで そしてこれから」でした。香川で生まれ育ち、小学校~高校はインテグレーション環境で学び、大学では数学を学びました。大学卒業後、香川に戻り、香川県立聾学校と一般の県立高校にて数学教師として教鞭を取ります。しかし、教えていくうちに、また、他の教員の様々な授業を見学していくうちに、ろう児に対する教育方法に疑問を持つようになったといいます。本当に子どもたちが理解しているのかー。パソコンやパワーポイント資料を使って視覚情報を掲示していたとしても、黒板の板書がパワーポイント資料に代わっただけにすぎない、ろう児たちが視覚情報を見ているだけで本当に理解できているとはいえないと気づきます。そこで留学後は、ICT教育について学び、情報機器を活用してもっとろう児たちが理解できる教材や教育方法について開発し、聾学校などに提案していきたいといいます。

 このように、それぞれ社会人として様々な経験を経て、悩みに悩んで、現状を変えるために留学を目指すようになった経緯をお話し頂き、良い刺激をもらえたのではないかと思います。山本さん、佐藤さん、牧谷さんのこれからのますますのご活躍をお祈りしています。

 参加してくださった皆さま、ありがとうございました!!


 

 

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