平成27年度第12回ろう者学ランチトーク:川上恵さん

2015/12/08掲載

 12月2日(水)に、第12回ろう者学ランチトークが行われました。

 今回は沖縄県聴覚障害者情報センターの川上恵さんにお越し頂きました。講演テーマは「今の仕事に活かして ~通訳学の学びから~」です。川上さんはギャロデット大学大学院で通訳学を学ばれ、現在は沖縄県聴覚障害者情報センターに勤務の傍ら、通訳分野でも活躍しておられます。

 おかげさまで教職員・学生合わせて24名の参加がありました。

 川上さんは、沖縄生まれの沖縄育ちで、幼稚部のみ沖縄ろう学校、小中高は地元の学校に通いました。地元の短期大学を卒業後、8年間地元の銀行に勤め、沖縄県聴覚障害者協会で手話指導と手話通訳対策部を担当し、手話通訳者の養成に関わりました。

 そこで、手話通訳養成についてもっと学びたいと思ったのが、アメリカ留学を目指したきっかけでした。情報保障が全くない中で育ったため、情報保障が整備されている中できちんと学びたいと思ったそうです。そこで日本財団聴覚障害者海外留学奨学金事業に応募し、4期生として留学されました。まずは、カリフォルニアのオーロニ大学で1年間英語研修を受け、その後ギャロデット大学のろう者学学部に3年生から編入しました。ろう者学学部では、ろう者学入門、米国の歴史、米国ろう社会の歴史、アメリカ手話、障害学などを学びました。

 学部在籍中、ケニアやグアテマラにインターンに行き、経験を積み重ねました。ケニアではケニアろうあ連盟事務所のインターンとして役員に同行し、ろう学校を訪問してエイズ教育などを手伝いました。現地のろう者たちも、ろう連盟の事務所を開設したばかりで試行錯誤していましたが、それを直に見れたことは貴重な経験になったといいます。沖縄でご両親がろう協会の活動をしているのを見て育ったので、懐かしく感じたとのことです。

 そして大学院は通訳学部に進学します。手話通訳といえば、聴者というイメージがあると思いますが、ろう者も入学できるそうです。例年1~2名ろう者が入学しているとのことです。基本的に授業は全てアメリカ手話で進められ、通訳の基礎、手話通訳の歴史、裁判通訳、メンタルヘルス通訳などを学びました。

 通訳の技術を学ぶだけではなく、様々な現場にも視察に行きました。例えば、アルコール中毒患者の集まりにも見学に行ったそうです。万が一、通訳を依頼されたとき、利用者がアルコール中毒患者だったらどうするかー。前もって現場を見ておくことで、様々な場面に柔軟に対応する心構えができるといいます。

 また、大学内の実習では、学内の通訳派遣会社で盲ろう通訳として実習を受けました。第一言語ではないアメリカ手話で通訳を務めることができるのか不安でいっぱいでしたが、ろう通訳者として経験豊富な先輩がメンターとして付いて色々と相談することができ、大変心強かったといいます。このように実習を積み重ね、米国認定ろう通訳士(Certified Deaf Interpreter)を取得されました。

 帰国後は沖縄聴覚障害者センターの職員としてライブラリーを担当しており、ろう通訳者として派遣されることもあれば、手話通訳と盲ろう通訳のサブコーディネーターとしてコーディネート業務を担うこともあります。

 沖縄聴覚障害者センターに勤務の傍ら、トルコで行われた世界手話通訳者会議WASLI2015で国際手話―日本手話の通訳を務めたり、仙台で開催された第3回国連防災会議で手話通訳コーディネーターを務めたりなど精力的に活動されています。特に国連防災会議の場合、今回初めて手話通訳を配置したため、主催者に手話通訳者用のスペースの確保をお願いするなど、とても苦労したそうです。根気よく説明して理解してもらうことが大切だといいます。

 最後に、ロールモデルがいないと目標が定まらない、川上さんの場合、ろう通訳はメンターを担当してくれた先輩、ろう協会なら自分の両親など様々な場面でロールモデルがいたことで、このような人になりたいと明確な目標を持つことができたといいます。「ぜひ、学生の皆さんはいずれ社会に出る。今のうちから目標とする人『ロールモデル』を見つけておいてほしい。何かあったとき、支えになってくれるはず」と温かいメッセージを投げかけてくださいました。

 参加してくださった皆さま、ありがとうございました!!

 なお、川上さんには大学院情報アクセシビリティ専攻手話教育コースの「手話通訳特論」及び「手話通訳演習」で、「ろう通訳者の役割」「通訳コーディネーターの役割」「高齢者の手話や国際手話の分析」などについてご指導をいただきました。

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