平成28年度第8回ろう者学ランチトーク:山本真記子さん

2016/06/27掲載

 6月20日(月)に第8回ろう者学ランチトークが行われました。今回は京都府の山本真記子さんにお越し頂きました。講演テーマは「まっこのフィンランド紀行」です。山本さんはダスキン愛の基金ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業でフィンランドに留学され、今回はその経験についてお話し頂きました。

 おかげさまで、教員、学生、地域にお住まいの方々合わせて、33名の参加がありました。

 山本さんは一般学校に通い、18~19歳の時に手話を学び始めたそうです。国際協力に興味を持ち、ダスキン愛の基金ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業に申し込み、研修生として選出されますが、ご両親や職場の上司など周囲の反対に合い、一旦辞退届を出したほど大変だったと話します。7ヶ月ほど周囲の人々へ説得し、ようやく認めてもらうことができ、無事2014年フィンランドに旅立つことができました。

 「国際協力への糸口を掴む」をテーマに、留学した地はフィンランド・ヘルシンキでした。ヘルシンキにあるフィンランドろう協会(FAD)と世界ろう連盟(WFD)の事務所で研修を受けました。留学期間中はフィンランド手話を習得し、またフィンランド文化を学びたい!と、聴覚障害を持つ人々の家に数件ホームステイしたとのことです。

 友人たちと食事やカフェにいくと、ココアとケーキのセットは1,000円を超え、半分サイズのパスタが2,500円もするので驚いたといいます。フィンランドの消費税は25-30%と、現在8%の日本から見るととても高い!と感じますが、 フィンランドの人々の声は「特に不満とは感じない」というものだったそうです。その理由として社会保障制度がとても手厚いからです。例えば、小学~大学までの学費は全て無料、成人しても長く大学に通っている人も多くいるとのことです。身体障害者の補装具、介助支援料金の補助も充実しており、ろう者の場合、手話通訳の費用も全て無料となります。さらに、高校生や大学生には政府から毎月約15000円のお小遣いが支給されるそうです。

 フィンランドの手話通訳者は手話通訳者養成校(HUMAK)に通って卒業と同時に手話通訳の資格を得て、手話通訳の仕事に就きます。きこえる人だけではなく、国際手話通訳士を目指すろう者も学んでいるそうです。フィンランドの手話通訳利用の在り方としては、1人あたり年間180時間以上、通訳派遣制度を利用することができます。利用できる範囲は幅広く、家族団欒の場や地域の祭典の時に派遣してもらうケースも多く見られたと話します。手話通訳を依頼する際は、地元協会などを通さず聴覚障害者が個人で直接通訳者に通訳派遣依頼をすることも可能だそうです。日本では家族団欒の場に手話通訳を呼ぶのはなかなか考えられませんよねと問いかけます。

 国際協力分野では、ろう連盟がまだ設立されておらず、ろう者の権利が保障されていない国としてアンゴラ、ヨルダン、イラク、オマーン、ミャンマー、ラオスなどが挙げられると説明してくださいました。研修開催や助成金による支援だけだと現地の人々は協力国に頼ってしまって自力で動く方法を学べない、だから国際協力とは支援するのではなく、連携しよう、つながっていこうという気持ちや態度が必要だということを学んだと話します。

 他にもフィンランドの文化として、雪積もる中もサウナに入って、冷たい湖に飛び込んでそれを繰り返す、白夜といって夜中でもとても明るく、夜遅くまで公園で子どもたちが遊んでいる風景が見られる、また、手話ではなく、顔だけで「うんうん」を表す方法があるなど、写真とともに楽しく紹介してくださいました。

 日本に帰国された後は、京都府聴覚障害者協会青年部、『目で聴くテレビ』のキャスターなど活動されているそうです。これからも活動しながら、国際協力に携わっていきたいと話してくださいました。山本さんのこれからのますますのご活躍をお祈りしています!!

 ムーミンが生まれた国としても有名なフィンランド、とても遠く感じますが、今回のランチトークで様々なフィンランド文化や社会保障、手話通訳制度などを知ることができ、少しは身近に感じられたのではないでしょうか。

 参加してくださった皆さま、ありがとうございました!!

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