平成29年度第1回ろう者学ランチトーク:品田千紘さん

2017/04/27掲載

 4月24日(月)に平成29年度初のろう者学ランチトークが行われました。今回は、本学卒業生で教職課程1期生である、埼玉県立特別支援学校坂戸ろう学園教職員(中高の数学担当)の品田千紘さんにお越しいただき、「技大生活を振り返って〜教職とバドミントン〜」というテーマで、お話しいただきました。

 おかげさまで、教員、学生合わせて、59名の参加がありました。

 品田さんは、新潟県長岡市出身で、大学入るまではインテグレートしていました。中学2年生の時に、聾学校に半年間通級で通っていたことがありますが、このときは手話もわからず、ろうの友人ができなかったそうです。そのため、筑波技術大学に入ってから、手話を本格的に覚え、ろうの友人がたくさんでき、デフスポーツがあることも知ったという流れになります。本学在学中は、中高の数学の教員免許をとるために、教職課程を履修しました。2014年に卒業後は、筑波大学大学院に進学しましたが、その在学中に埼玉県の教員採用試験に合格します。そこで、大学院2年目から1年休学して、教員の仕事に集中しましたが、大学院に通いながら仕事をすることは厳しいと判断し、大学院を退学し、現在に至ります。

 品田さんは、まず、冒頭で「〇〇があるから頑張れる」と思うことはありませんか?と学生たちに問いかけます。品田さんにとっての「〇〇」は、バドミントンでした。「バドミントンがあるから、どんなことでも乗り越えられた」と胸を張って言うことができるというのです。「バドミントンをしていることで、自分の居場所を見出すことができた」「聞こえない自分が嫌でも、バドミントンをしている自分だけは大好きだった」と明るく、ハキハキとお話しされていました。バドミントンは、小学校5年生のときに水泳から転向して、16年間やっています。本学在学中は、筑波大学のバドミントン部に所属しながら、練習を積み重ねていたのだそうです。現在は、教員の仕事をしながら、地域の一般のバドミントンクラブに所属して練習しています。デフの日本代表としても活動していて、今年の7月にトルコで開催されるサムスンデフリンピックの日本代表に選ばれています。シングルスとダブルス、ミックスダブルス、団体戦に出場する予定だそうです。皆さん、応援しましょう!!

 さらに、デフスポーツ(品田さんにとってはデフバドミントン)を通して、色んなロールモデルと出会い、視野が広がった一方で、競技人口の少なさ故の甘さ、本気でスポーツに取り組むための環境の不十分さを感じたと言います。でも、その経験のお陰で、自分が聞こえないということを受け止めるきっかけになったのだそうです。2013年にブルガリアで開かれたソフィアデフリンピックでは、国からの援助が少なかったために、コーチと監督を連れて行けなかったエピソードを提供し、他国と比較して、日本のデフスポーツには国の理解が浅いために、厳しい現状があることを紹介してくださいました。

 教員を目指したきっかけについては、一般校から本学に入り、初めてしっかりした情報保障を受けたところ、授業の内容が全部理解でき、多くを学べたことに感動した経験から、自分が先生になって、ろうの子どもたちのために、きちんと伝え合える授業、分かる授業をしたいと考えたのだそうです。仕事では、基本的に残業はしないで、バドミントンの練習時間を確保する、ストレスを溜めないようすることを心掛けているとのことでした。野球部の顧問をしていて、細かい知識が無いけど、偉そうに基本的な指導をしていると、会場の笑いを誘っていました。

 次に、「ろう教員が聾学校で働くこと」について、働いてみて分かったことを2つ提示してくださいました。1つ目は、耳が聞こえない先生というだけで、子どもたちは親近感を持つことから、子どもたちのこれからの生き方、考え方に影響を与える身近な存在がろう教員になるので、その責任が伴う役割であることを自覚しなければならないということでした。そのために、品田さんは自分の考え、知識を子どもたちに伝え続けられるように、日々勉強をしているのだそうです。2つ目は、きこえる教員が、子どもたちの学校生活の面で気付きにくい部分を、ろう教員が教えるという点についてでした。ろうの気持ち、情報保障の提供の仕方、手話表現について、ろう教員が自ら指摘し、発信していくことで、自分で言えない、頼めない子どもたちの見本にもなり、子どもたちのために社会の状況を変える小さな力になるとお話ししてくださいました。

 最後に、学生に向けて、「フットワークは軽く、色んな人とつながりを持ち、色んな人の考え方、生き方を見聞して、知識を蓄える。様々な事柄に対して、受け身ではなく、深く・多様な視点から自分の考えを持つようにしてください。」とメッセージをいただきました。

 今回、講演者が聾学校の教職員で、しかも、本学教職課程の1期生ということで、教職課程を履修している学生、その学生を指導している先生方にとって、身近にロールモデルをみることができて、大変有意義な時間を過ごすことができたのではないのでしょうか。教員を目指す学生の皆さん、頑張ってください!!

 参加してくださった皆さん、ありがとうございました!!


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