「段また段を成して」上映会と
映画出演者である川俣郁美さんの講演会を実施しました

2018/02/09掲載

 1月24日水曜日、本学天久保キャンパスにある総合研究棟のプレゼンテーションルームにて「段また段を成して」の上映会を開きました。45分ほどの上映後に、映画の中でナレーションを務めた川俣郁美さんに「米国留学と映画出演を通して学んだ、ろう運動の大切さ」というテーマでお話しいただきました。

 おかげさまで、学生と教職員、地域の方々を合わせて、約80名の参加がありました。

 川俣さんは栃木県出身で、2009年7月~2016年5月の約7年間、主に日本財団聴覚障害者海外奨学金事業の第5期生として、米国に留学した経歴をお持ちです。彼女の自己紹介に始まり、その後に米国留学、映画出演のお話に移ります。

 なお、本企画は筑波技術大学平成29年度学長のリーダーシップによる教育研究等高度化推進事業にて実施されたものです。

~留学までと留学先での経験について~

 世界各国には、学校に行きたくても行けない子供たちがいること、一日中働いてもその日にもらえる給料が安く、その日のうちに生活で消費してしまうがために貯金がないという貧しい暮らしをしている人たちがいることをテレビで見たことが、あとの米国留学に繋がる国際支援に興味を持つきっかけだといいます。特にその中で、きこえない子どもたちの場合、学校や生活の中で、更なる苦労があるのではないか、それを支援するための学校を建てたいという夢を持つようになったのだそうです。国際支援のためには、英語が欠かせないけども、苦手でどのように勉強したら良いか分からなかったと言います。その頃、当時、筑波技術短期大学(当時の名称)で非常勤講師として英語を教えていた高村真理子先生との出会いにより、アメリカでは障害者の差別を禁止し、その権利を保障するADA法(障害を持つアメリカ人法)がつくられ、障害者が学校で学びやすい環境が整っているという話を聞き、米国社会に興味を持ちます。高校を卒業後、英語を学ぶために1年間ギャローデット大学に在学していた時に、同大学でソーシャルワークを学ぶ高山亨太さん(日本財団聴覚障害者海外奨学金事業 第2期生)らと出会います。彼らに将来について聞かれ、学校の先生になって、いずれは学校を建ててろうの子どもを支援したいという話をしたところ、その夢を実現するためには社会問題、経済、ろう者の権利保障についても学ぶ必要があるということを助言していただいたのだそうです。帰国後、自分のやりたいことに近いものは何かと考えたところ、クライアントの生活と社会を繋げる役割を持つソーシャルワークに興味を持ち、ソーシャルワークと国際支援を学ぼうと再び米国行きを決め、日本財団聴覚障害者海外奨学金事業に応募したといいます。留学先として選んだギャローデット大学はろう者に特化した支援の在り方、世界各国からのろう学生が集まり、共通言語はASL(アメリカ手話言語)という点で学習環境が非常に良いのだそうです。ギャローデット大学入学前に1年間オーロニ大学で英語とASLの基礎を学びます。オーロニ大学はそのほとんどがきこえる学生ですが、そこでもASL通訳、文字通訳を利用できる仕組みがあり、ろう学生が学ぶ環境が十分に整っていたといいます。

 ギャローデット大学生活の多民族、多文化、多宗教、多言語の中で、改めて日本の良さに気付き、視野が広まったのだそうです。また、一人一人の個性とそれぞれの考え方の違いをお互いに認め合う、アルバイトを通して社会経験を積むことができたことが自分の中では一番影響が大きかったといいます。

~映画出演を通して~

 川俣さんはまず、本学の学生たちに、自分に合った情報保障のリクエストができているのか、ろう協会との関わりや手話関係の繋がりを持っているのかを問います。

 全日本ろうあ連盟創立70周年記念で作られた映画の中で、特に大きなテーマとなっていたのは、ろう者が受けてきた差別問題です。運転免許運動による差別解消、民法11条改正運動と欠格条項撤廃運動による権利保障などについては、その不可能を可能に変えた背景に、昔の先輩たちが法改正のために動いた一生懸命な取組があったということを忘れてはいけないといいます。仲間たちと力を合わせて一つになれば、国を変えられます。映画出演を通して、代々引き継がれてきた70年の歴史があり、社会的繋がりが強いろうあ連盟の存在意義について、改めて素晴らしいものであると実感したのだそうです。

 最後に、現在もまだまだ差別解消がなされていない場面が時々見られますが、それに対して「不可能」で終わるのではなく、一人一人がろう者のリーダーであるという自覚をもって、仲間との交流をして情報を交換したり、社会問題に関心を持って向き合い、議論したりすることも必要なことであるとお話しされました。さらに、一人一人の専門性、知識を合わせて社会に働きかければ、その影響力は間違いなく大きなものになるので、先輩たちから引き継いで、自分たちが将来のために活動をするのだという意識を持つことが必要なのではないかと提言します。そのために、大学というネットワークは卒業した後も繋がり持って大切にしてほしいと学生に向けて助言をされていました。

 お話の中に時折クイズも取り入れていて、ギャローデット大学のロゴの由来、ギャローデット大学の特徴などを分かりやすく取り上げてくださいました。2つ目のクイズで聞く前に答えが一時的にスライドに出てしまうというアクシデントがあり、会場が笑いに包まれる場面も見られました。「ギャロデット」という大学名は創立者のエドワード・マイナー・ギャロデットからきています。「ギャローデット」の手話表現は彼の「ネームサイン」であり、その由来は、トレードマークであった眼鏡(ASLの「眼鏡」で表現)なのだそうです。現在の学長がろう者であること、講義が全て手話で行われるところが本学と異なるところですね。

 今回を通して、米国留学に興味を抱いた学生も少なからずいると思います。また、自分が置かれている立場を改めて見直し、将来のためにどのような活動ができるかを考える良い機会となったのではないのでしょうか。

 参加された皆さん、ありがとうございました!!

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