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ランチトーク2016.04.28

平成28年度第2回ろう者学ランチトーク:金子真美さん

 4月25日(月)に第2回ろう者学ランチトークが行われました。

 今回は本学大学院卒業生の金子真美さんにお越し頂きました。講演テーマは「25年間働いてきた仕事を辞めて、大学院に飛び込んだワケ」です。金子さんはこの3月、本学の大学院情報アクセシビリティ専攻手話教育コースを修了されたばかりです。これまでのお仕事、そして大学院での経験についてお話し頂きました。

 おかげさまで、教職員・学生・地域にお住まいの方々合わせて50名の参加がありました。

 広島で生まれ、3歳の時にストレプトマイシンの副作用で失聴した金子さんは5歳の時に初めて補聴器をつけ、ことばの教室に通い始めます。小中高は地域の一般校に通いました。九州造形短期大学デザイン科を卒業後、印刷会社で10年働きます。手話を覚え始めたのは20歳の頃だったといいます。

 その後、NPO法人福岡市手話事業協会(現・福岡市聴力障害者福祉協会)で専従職員として専門学校の非常勤講師としての手話指導やピアカウンセリングに携わるようになります。35歳の時に、社会福祉法人横浜市リハビリテーション事業団横浜ラポール聴覚障害者情報提供施設に転職し、聴覚障害者相談員として働き始めました。

 聴覚障害者情報提供施設とは身体障害者福祉法で定められた聴覚障害者のための施設で、手話通訳・要約筆記者の派遣、聴覚障害者相談、機器貸し出し、ビデオライブラリーなどの事業を展開しており、全国に51カ所あります。横浜ラポール聴覚障害者情報提供施設は全国で6番目に開所し、今年で24年目になるとのことです。

 相談員として長く勤めてこられた中で、前によく来ていた相談者が最近来ないと思っていたら、病院から「入院したけどどうコミュニケーションをとれば良いのかわからない」という相談があり、病院へ駆けつけて支援するように外へ出て支援するケースが増えてきました。この流れで、訪問相談が2008年に開始され、当事者の聴覚障害者だけではなく、医師、看護師、訪問看護師、医療ソーシャルワーカー、ケアマネージャー、ヘルパー、福祉事務所職員など多岐にわたって支援関係者と関わり合う機会が増えましたが、彼ら支援者に聴覚障害に関する知識がなかなか正しく伝わらないという状況がよく起きました。それについて解決できないものかと悩んでいた時にちょうど大学院情報アクセシビリティ専攻の募集要項を目にします。支援員などの関係者に対する啓発・サポート方法について研究したいと、退職して大学院に入学することを決意しました。

 必ず誰もが齢を取って、高齢者としてサポートを受けなければいけない時が来るからこそ、ろう高齢者のサポートの現状について知ってほしいと話します。大学院では、関係機関や支援員向けの啓発資材作成をテーマとした研究を行いました。全国の聴覚障害者情報提供施設に調査を行った結果、訪問相談を実施している施設は72%、しかし啓発資材を作成している施設は半数以下の40%であったとのことです。しかもそれぞれ施設や相談員が独自に作成したもので、内容もまちまちです。研究を通して、支援員向けの啓発資材のニーズは高まっているが不足していること、相談員が作成するには時間的にも体力的にも負担が大きいことなどがわかってきました。既に作成された資材を収集して分析した上で項目案を作成し、ヒアリング調査を重ねて全国で活用可能な啓発資材の内容として、最終的には7カテゴリ31項目案を提示し、論文としてまとめました。

 そして在学中、自分のキャリアについて振り返ることができ、相手に自分の障害の程度やコミュニケーション方法を説明できるようにする必要があると改めて感じたといいます。

 現在のお仕事は、元職場の横浜ラポール聴覚障害者情報提供施設に聴覚障害支援員として再採用され、新しく始められた「普及・啓発事業」に携わり、市職員向けの手話学習会の企画や講師依頼の窓口などを担当しておられます。関係機関や支援員向けの啓発資材についても資料を作っている途中で、まずは地域で活用できるようにしていきたい、そして大学院で学んだ内容を活かしていきたいとのことでした。本学で学ばれたことを糧に、これからますますご活躍されることをお祈りしています。

 参加してくださった皆さま、ありがとうございました!!

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