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ランチトーク2016.07.20

平成28年度第9回ろう者学ランチトーク:岩山誠さん

 7月4日(月)に第9回ろう者学ランチトークが行われました。今回は鹿児島にお住まいの岩山誠さんにお越し頂きました。講演テーマは「英国研究留学体験記~職場における先進的な情報保障制度のモデルを求めて~」です。岩山さんはダスキン愛の基金ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業でイギリスに留学され、今回はイギリスで研究された成果についてお話し頂きました。

 おかげさまで、教員、学生、地域にお住まいの方々合わせて、50名の参加がありました。

 留学した動機は岩山さんが厚生労働省に入省し、ハローワーク(公共職業安定所)の障害者担当窓口で障害者の就労支援に携わっておられたことでした。岩山さん自身もろう者ということで、聴覚障害者の相談を多く担当することになりますが、そこで聴覚障害者の就労の現状を目の当たりにします。聴覚障害者に仕事を紹介しても辞めて戻ってくるケースが後を絶えなかったのです。

 この状況を打開したいという思いで休職し、大学院に進学します。研究を進めているうちに、イギリスの障がい者就労支援事業「Access to Work (AtW)」のことを知りますが、詳細の情報がなかなか得られなかったそうです。そこでダスキンに応募し、イギリスに留学して研究することを思い立ちます。

 最終的には人づての紹介でセントラル・ランカシャー大学ろう・手話国際研究所で研修を受けることになりました。セントラル・ランカシャー大学ろう・手話国際研究所はプレストンという中西部地方にあり、ろう関係のイベントが多く開催されており、デフコミュニティとして盛んな街だそうです。

 「Access to Work (AtW)」事業は英国雇用年金省から、有償の仕事に就く障がい者の面接・通勤・業務遂行などに対する実用的な支援に助成金が支払われる制度です。聴覚障害者の場合、実用的な支援は主に手話通訳となるため、手話通訳者が支援員として配置され、助成金が支払われることになります。助成金の上限は約700万円となっています。元々は上限がありませんでしたが、2015年の秋に上限が設けられたそうです。

 研修場所セントラル・ランカシャー大学ろう・手話国際研究所で、「Access to Work (AtW)」の制度を利用している職員がいたため、実際に目にすることができたといいます。聴覚障害者の職場には手話通訳者が常駐しており、会議や電話サポートなど、必要な時にいつでも支援を受けられます。また、メールの文章をチェックするなどランゲージサポートもなされていました。ろう者がストレスを感じずに仕事に専念できる環境が整えられてにいたとのことです。

 また、支援員ですが、聴覚障害者自身が自分との相性が良さそうな手話通訳者を選択できます。このように支援員との直接的な契約もあり、対等に共に仕事できる環境も整っています。「Access to Work (AtW)」の制度が始まってから、企業経営者として活躍する聴覚障害者や大学の教員、管理職などに就く聴覚障害者も増えたといいます。

 帰国後、休職期間が終わるため、厚生労働省に戻るか研究を続けるか難しい選択を迫られます。イギリスに着いてすぐ、パディ・ラッド博士の講演会に参加する機会があり、パディ・ラッド博士との出会いが岩山さんの決心を後押ししました。パディ・ラッド博士もケースワーカーとして勤められた経験がおありで、その経験から研究を進め「デフ・フッド」の本を出版されました。そこで、厚生労働省を退職し、NPOで働きながら研究を続けていくことを決意されたそうです。今はNPOデフNetworkかごしまで放課後等デイサービス「デフキッズ」の施設長として勤めながら、研究も進めておられます。岩山さんのこれからのますますのご活躍をお祈りしています!

 学生の皆さんもいずれは社会に出る立場であり、就職後どのように働いていったらいいのか、ストレスなく仕事に専念できるためにはどうしたら良いのか、今回のランチトークから様々なヒントを得られたのではないかと思います。

 参加してくださった皆さま、ありがとうございました!!

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