お知らせ

ろう者学トーク2023.06.13

2023年度ろう者学トーク限定配信(第2回)のご案内  山口トモ氏「聴覚障害の私が見たD&Iの景色」

 ろう難聴者の様々な生き方を模索していく学問でもある『ろう者学』。

 本学では、ろう者学教育コンテンツの開発及びろう者学を学ぶカリキュラムの作成や提供に取組み、2013年度から取組みの一環として「ろう者学ランチトーク」を開催してきました。

 2019年度までは本学天久保キャンパスを会場として対面で開催しておりましたが、2020年度からは新型コロナウイルス感染症感染拡大防止に伴い、「ろう者学ランチトーク」の開催形態を変更し、「ろう者学トーク」として撮影・編集した映像コンテンツをご提供しております。

 「ろう者学ランチトーク」と同様に、本学や他大学等を卒業した後にキャリアを積んでいるきこえない方々を講師として、これまでのご経験や現在の活動を通して、ろう難聴者のキャリア形成に必要と考える知識についてご講演いただいております。

 本コンテンツはお申し込みいただきました皆様への限定公開となっておりますが、全国の高等教育機関等で学ぶきこえない・きこえにくい学生、きこえる学生、支援などに関わる学生、教職員の皆さまをはじめ、ろう者学やろう難聴者に関心をお持ちの方々にも視聴いただけます。視聴のお申し込み方法につきましては、下記をご参照ください。

 

 2023年度第2回ろう者学トークの講師は、本学卒業生で、デザイナーとして企業に勤めたのち、大手コーヒーチェーンの接客業に転職し、現在はコスメショップでのメイク指導や接客も併せてダブルワークをしながら、接客のプロとしてご活動されている山口トモ氏です。「聴覚障害の私が見たD&Iの景色」というテーマでご講演いただきました。

 

最初に講師 山口トモ氏のプロフィールをご紹介いたします。

山口トモ氏


5歳から徐々に聴力を失う。

大学で初めてろう者の世界と手話に触れる。

13年間、企業でデザイナーとして従事したのち、聞こえなくても接客業も経験してみたいと、2017年より大手コーヒーチェーンに勤務。

2019年、接客スキルと特技のメイク術を活かし兼ねてより憧れのオーガニックコスメセレクトショップに入社。コスメの店舗接客では初のデフスタッフとして活動。聴覚障害を持つお客様をはじめ、健常者のお客様とも手話や筆談でカウンセリングを行う。

また、聴覚障害を持つ学生を対象に新社会人に向けた身だしなみ講座や、地元市民や学校を対象とした社会福祉教室の講師、企業への講演など、健常者と聴覚障害者の架け橋的活動を幅広く行う。

ユニバーサルデザインコーディネーター資格保有。

2022年5月、NHK教育 ハートネットTV ”#ろうなん 聞こえないセンパイの課外授業” に講師として出演。


「人と会話することがメインとなる接客業はきこえない人にとってハードルが高い」、「きこえない人は接客業に向いていない」といった、ネガティブなイメージを持たれることが多い接客業ですが、接客のプロである山口さんは「環境と工夫次第できこえなくても接客業ができるんです!」と払拭します。そして、山口さんご自身の経験から、きこえない人もできる接客業とはどのようなものなのか、分かりやすく説明してくださいます。


 高校まで一般の学校に通っていた山口さんは、筑波技術大学(当時:筑波技術短期大学)に入学し、そこで初めてろう者の世界を経験します。手話が分からず、きこえる世界ときこえない世界、どちらにも自分の居場所がなく自信喪失に陥りますが、自分と同じような境遇を経験している先輩が手話を教えてくれたことがきっかけで、友達と手話で話せるようになります。手話だとリアルタイムで話の内容がわかるし、リアルタイムでみんなと笑いあえるので、自分らしく生きられるようになったのは筑波技術大学のおかげだと話します。


 そして、卒業後、念願のデザイナーになり就職します。通っていた手話講習会で、コーヒーショップに勤めている仲間に接客業をやってみないかと誘われ、13年間のデザイン職にピリオドを打ち、大手コーヒーチェーン店に転職します。

 大手コーヒーチェーン店と並行して、オーガニックコスメセレクトショップでの接客業にも携わりますが、コロナ禍によってマスクで唇の動きが読めなくなり、もう接客業は難しいかもしれないと諦めかけてしまいます。それでも諦めることなく、「できない」を「できる」に変える工夫を凝らすことで乗り越えられたといいます。具体的な例として「指差しメニューや音声認識文字変換アプリなどのツールを利用する」、「お客さんがびっくりして怖がらないよう、最初に自分がきこえないことを丁寧に説明する」、「周囲の音がきこえないので、常に店内を見渡す、振動タイマーを活用する、聴者スタッフの協力を得る」といったさまざまな工夫で、接客がスムーズにできるとお話しくださいました。また、当事者自身の努力や工夫だけでなく、誰もが働けるよう、社会や企業が多様性を理解し、挑戦や工夫を取り入れやすい環境づくりにも期待したいと話します。


 ここ数年、きこえない人が接客しているお店を時々目にするようになりました。接客業のパイオニアとして切り拓いていかれている山口さんの存在があってこそ、接客業をやりたいきこえない人が増えてきていることでしょう。

 ご講演くださった山口さん、本当にありがとうございました!

 


講師の山口氏は日本手話言語でご講演いただいております。

動画には日本語字幕を付与しておりますので、ぜひご視聴ください。(28分02秒)

 

【お申し込み方法】

視聴をご希望される方は、ろう者学教育コンテンツ開発ウェブサイトの「お申込み&お問い合わせ」のページにて、下記破線内1〜5についてご記載のうえお申し込みいただきますようお願いいたします。

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1. 教育機関等の名称・部局:

2. 氏名:

3. 視聴期間:〇月✕日〜〇月✕日(2023年6月から2024年3月までの間、日曜日開始・土曜日終了の1週間を上限とする)

      ※視聴希望日の約1週間前までにお申し込みください。

4. 利用目的:(例:授業、研修、視聴会など)

5. 対象者数:〇名

※本コンテンツは学生、教職員、支援・教育関係者の皆様にご視聴いただけます。

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【問い合わせ先】

ろう者学教育コンテンツ開発ウェブサイトの「お申込み&お問い合わせ」のページにてお問合せください。

※担当者の勤務体制により、映像コンテンツ視聴のお申し込みやお問い合わせの対応にお時間をいただく場合がございます。

あらかじめご了承ください。


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