(2) 宿泊施設の情報・コミュニケーション保障

1 対象

筑波技術大学に在籍する聴覚障害のある学生

2 指導の形態

通常教室 90分授業

3 指導の目的

1)情報保障とコミュニケーション保障の区別を理解する。

2)宿泊施設を例に、聴覚障害者として不便や不安に感じる点を共有する。

3)過去にあった聾学校寄宿舎の火災事故について知る。

4)宿泊施設の優れた取り組み例を知る。

5)宿泊施設側、聴覚障害のある宿泊客側それぞれに求められる取り組み課題を整理する。

4 指導にあたって

・スライド資料とワークシートを配布する。

・ワークシートを使ってグループ活動ができるようレイアウトを考える。必要に応じてブギーボードを利用させる。

5 本時の展開


学習活動 指導・支援内容
(留意事項及び配慮事項)
評価の観点

 
本授業の流れを説明。ワークシートを配布する。 コミュニケーション方法を調整できているか【観察・発問】
情報保障とコミュニケーション保障の違いを考える(10分) ホワイトボードに「情報保障」「コミュニケーション保障」と書いて、発問にて学生に両者の違いを考えさせる。
発問例
  • 講演の手話通訳はどちら?
  • テレビ番組の字幕はどちら?
  • 質疑応答の手話通訳はどちら?
単方向と双方向の違いという考え方も提供する。
 
 
 
 
 
 

 
グループ活動で宿泊時の問題点(不便な点、不安な点)を整理する(40分) 5人前後のグループに分ける。スライド(S2)を示して、課題を説明する。
グループでの話し合い(20分)
話し合ったことをワークシートに書かせる。
情報収集・予約、チェックイン、宿泊の場面別に、各グループから一つずつ出してもらって、ホワイトボードに書き込む。
全て書き終えてから、「情報保障」「コミュニケーション保障」の概念で整理して行く。宿泊室のドアにある「セーフガード」の役割についても言及したら良い。最終的には、宿泊施設側としての理解促進と、宿泊者側としての「聞こえないこと」の伝達などが取り組み課題としてあげられることを確認する。(課題)
各グループで全員が討議に加われているかどうか【観察】内容が乏しい時は材料の提供
聾学校寄宿舎の火災事故について知る(15分) スライドを用いて、1950年の岡山聾学校寄宿舎火災事故(S3)と2003年のロシアでの聾学校寄宿舎火災事故(S4)について説明する。
  • 「聞こえない」ことを再認識する
  • 社会の聴覚障害者の暮らしに関する理解不足を知る
  • 本学の寄宿舎の場合は大丈夫かを確認する
学生が想像力を働かせられているかどうかを確認する【発言】
最新の情報アクセシビリティ機器の種類について知る(10分) ろう者学教育コンテンツ動画「全国ろうあ者大会⑤バリアフリー機器展」0:00-2:28を視聴する。
  • 手書き電話
  • 聴導犬
  • 光・振動機器
それぞれが予約、チェックイン、宿泊でどのように役立つかを発問で確認する。
 


宿泊施設の優れた取組み例を知る(10分) 宿泊施設が光・振動機器をいくつ用意すれば良いのかという発問をして、学生に考えさせる。地域の観光協会やホテルグループで対応している例を紹介する。(S5) 教員の説明を理解できているかどうか【観察】
教員が発問する形で、学生に本授業で学んだことを確認できるようにする。 発問例:
  • 情報保障とコミュニケーション保障の違いは?
  • 宿泊施設側の最も重要な取組み課題は?
  • 宿泊客側(聴覚障害者)として心構えとすべきことは?
学生が本授業のポイントを理解できているか【発問】

参考文献

・総務省消防庁「旅館・ホテルの火災時等における聴覚障害者への情報伝達手段のあり方検討委員会」報告書、平成17年3月
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/chokaku_shogai/index.pdf

さらに深く学ぶために

・全通研「手話この魅力あることば13」12分、伴徹氏の実経験談「1950年の岡山県立ろう学校の火災」を視聴して、・・・

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