(4) コミュニティ

1 対象

筑波技術大学に在籍する聴覚障害のある学生

2 指導の形態

通常教室 90分授業

3 指導の目的

1)同じ聴覚障害のある先輩の話を聞くことの大切さを学ぶ

2)自身の今までの経験を振り返り、先輩の経験と比較することで、1960年代の障害者観や社会的背景について議論する。

3)自身の今までの経験を振り返り、同年輩の経験と比較することで、共通点と相違点を議論する。

4)古典的なデフコミュニティのモデルの学習を通して、聴覚障害のある学生をめぐるデフコミュニティに広義の視点と狭義の視点があることを学ぶ。

5)デフコミュニティのモデルにおいて自身がどこに立っているのか、これからどこに行こうとしているのかを熟考する。

4 指導にあたって

・適宜ワークシートを配布、終了時にスライド資料を配布する。

・ワークシートを使ってグループ活動ができるようレイアウトを考える。必要に応じてブギーボードを利用させる。

・ろう者学教育コンテンツの動画を用いる。肥田さんの自己紹介。

5 本時の展開


学習活動 指導・支援内容
(留意事項及び配慮事項)
評価の観点

本授業の流れをS2で説明 コミュニケーション方法を調整できているか【観察・発問】
きこえない高齢者の話を聞く(10分) 肥田弘二氏について簡潔に説明
  • 現在75歳前後(55年先輩)、税理士
動画視聴[自分史(肥田弘二氏)]8分25秒
  • 聴力損失について
  • 高等学校までの教育歴について
  • 高等機関での学修について
  • 就職について
  • ろうあ運動について
動画視聴に集中できているかどうか【観察】
 
 

自分の今までの聴力損失、学校教育、バイト等の経験を振り返り、比較する(20分) ワークシートを配布して、学生自身の経験を書かせる。
そして、肥田さんと学生自身の経験の相違点を考えて書かせる。
ワークシートに自分の言葉で書けているかどうか【観察・発問】
肥田氏の経験との違い、1960年代当時の世間の障害者観について考える(15分) 5名前後のグループを作って、書いたワークシートを見せあった後、教員が発問して何名かに意見を発言させる。
発問例
  • 1960年代に高校や大学への入学が断られたのはどうしてだろう。
  • 1960年代の肥田さんとあなたの現在の経験で全く違う点はどういうものだろう。
  • 逆に、時代が違っても共通している面は何だろう。
共通点は、今も昔もろう者への無理解があるとか、ろう者の仲間がいることとか、手話によるコミュニケーションの輪があるとか・・・
グループ活動に積極的に参加しようとしているか、他者の意見を最後まで聞こうとしているか、他者に自分の意見をきちんと伝えられているか【議論・発表】
コミュニティの概念を確認する(10分) S3でコミュニティの概念を3通り紹介する。最初の二つは日本手話での表現とアメリカ手話での表現を紹介して比較させるとわかりやすい。そして、三つ目の概念の後、最もシンプルな説明として「ムラ」の考え方を示す。「選手村」「ムラ意識」「村八分」 教員の説明を理解できているかどうか【観察】
 
  
 
 
 
 
 


古典的なデフコミュニティのモデルについて学ぶ(20分) S4にてBaker & Cokely 1980のモデルを説明する。
  • 聴力的観点
  • 社会的観点
  • 言語的観点
  • 政治的観点
学生の何人かを例にして、どのようなルートでデフコミュニティに入るのかを説明する。
  • 手話の出来ない聴覚障害者も聞こえる人もデフコミュニティの構成メンバーとなりうる。
  • さらに、手話サークルのきこえるメンバーもデフコミュニティの構成メンバーとなりうる。
  • 狭義の見方と広義の見方ができる。どう見るかは人により異なって良い。
コミュニティと文化の関係性を理解し、本授業で学んだ内容を復習する(15分) S5で文化の定義を紹介し、特定の社会をデフコミュニティに置き換えてみると、コミュニティと文化の関係を理解しやすくなることを、ろう者文化の具体例とともに実感させる。そして、このデフコミュニティを広義、狭義どちらでみたら良いかを考えさせる。→課題
 
教員が発問する形で、学生に本授業で学んだことを確認できるようにする。
発問例:
  • 高齢者の話を聞くことは大切であると思いましたか。
  • デフコミュニティのポイントを説明してみてください。
  • デフコミュニティとろう者文化の関係を話してみてください。
学生が本授業のポイントを理解できているか【発問】

参考文献

・大杉豊2012「ろう者コミュニティの視点」聴覚障害児の日本語言語発達のために〜ALADJINのすすめ〜、pp16-23.

【資料のダウンロード・映像の視聴】