自立活動「聴覚障害者が裁判に参加することになった場合は?!」学習指導案

1 対象

高等部3年生

2 指導の形態

DVDを視聴できる教室

3 指導のねらい

1)聞こえない人が裁判員に選出された場合を想定し、聞こえない人と聞こえる人が正確に情報を伝達できる手段を考え、裁判をはじめ様々なコミュニケーションの場でも活用できる力を高める。

2)裁判員に選出された場合の情報保障、裁判員の役割や動きなどついて、再確認したり、問題点を知っておいたりすることで、事前に対応できる心構えを持つ。

3)情報保障のソフト面やハード面の双方が大事になってくることを理解し、裁判制度をはじめ、自ら社会に関わろうとする態度を育む。

4 指導にあたって

・情報保障の手段(ハード面:手話通訳・PC要約など)の理解はもちろんだが、情報保障を有効に活用するためには、周囲の理解や協力(ソフト面:発言のスピード調整や配慮など)を自ら要求することも大事であることを押さえる。

5 本時の展開

学習活動 指導・支援内容
(留意事項及び配慮事項)
評価の観点

スライドショーにて、司法の仕組みを振り返り、知っていることや考えたことを発表する。 「裁判員制度を知っている?」と発問し、知っている生徒がいたら、発表させるとともに、裁判時の情報伝達方法に着目させ、本時の学習への関心を持たせる。


裁判員制度の仕組み(裁判員に選出される過程)等について再確認する。
  • 候補者通知が届いた人が不安な気持ちになった理由を考察し、全員で協議する。
(ワークシート記入)
*映像視聴
「候補者通知」[00:00~01:20]
候補者通知が届いた人が不安になった理由に着目させ、裁判員に選出される可能性が誰でもあるということを押さえさせる。
候補者が不安になった理由を考察したり自分の考えを発表したりしたか。ていたか。(考察・発表)


自身の情報保障の経験を振り返りながら、聴覚障害者も裁判に参加できる方法を考え、それぞれ発表し合う。
(ワークシート記入)
*映像視聴
「裁判員制度の解説」[01:50~04:25]
「聴覚障害者が裁判員に選出された場合、どのような配慮や支援が必要であるのか」と発問し、生徒から出てきた意見の中から要点を見出し、協議しやすいように板書する。
聴覚障害者も参加できる方法を考えたり発表したりすることができたか。(考察・発表)


模擬裁判後の課題を知り、改めて必要とされる支援を考え、発表する。
  • 情報保障(ハード面)
  • 周囲の理解(ソフト面)
*映像視聴
「模擬裁判」[06:55~10:05]
  • 板書内容の要点以外に必要な支援があれば加筆し、情報保障(ハード)だけではなく、周囲の理解(ソフト)もないと情報保障が成り立たないことに気付かせる。
DVDの中からヒントを見出そうとしているか。(関心・態度)
聴覚障害者が裁判員に選出された場合の3つの要点や田門弁護士のメッセージを受け止め、情報保障を上手に活用することで私たちも裁判員をはじめ社会に参加していく姿勢をもつ大切さを理解する。
  • 当事者本人が情報保障をどう生かすかにより、社会参加の幅が変わってくることを理解する。
*映像視聴
「3つの要点と田門弁護士からのメッセージ」[11:15~15:00]
「もし、裁判員候補に選出された場合はどうするか?」と発問し、学習内容を理解しているか度確認する。
 
  • 障害者差別解消法も関連していることに着目させ、当事者本人が情報保障をどのように活用するかで、社会参加の幅が変わってくることを押さえさせる。
自ら社会に関わっていこうとする姿勢を持たない限り、情報保障の充実や周囲の理解は深まらないことを理解できたか。(理解)

6 参考・引用文献

使用DVD  ・ろうを生きる難聴を生きる NHK Eテレ 2009年4月19日放映
       「 ここが知りたい! 聴覚障害者と裁判員制度 」
       *聴覚障害者情報提供施設などのライブラリーで借りられます。

指導参考資料 ・手話研究所サイト(刑事裁判):
       http://www.newsigns.jp/featured001
      ・よくわかる!裁判員制度Q&A(第10版)
       (2016年9月発行:裁判所)
      ・裁判制度forキッズ:
       http://www.saibanin.courts.go.jp/kidz/index.html

作成:尾田 将史(鳥取県立鳥取聾学校),2017年
編集:ろう者学教育コンテンツ開発取組担当

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