(ある程度の「支援」を受けた経験がある)高等教育機関に在籍する聴覚障害学生
※前期の講義を終えた聴覚障害学生など
通常の教室、一斎授業
1)大学における合理的配慮や大学入学共通テストの受験上の配慮は、相手によって決定されたり、示された選択肢の中から選んだりするものではなく、自分に適した方法を考え、申請する制度であることを知る。
2)合理的配慮などの「支援」について、自分にあった方法を考えるために必要な事項について整理する。
・本指導案では、大学等が提供する合理的配慮と大学入学共通テストの受験上の配慮をまとめて「支援」 としている。大学入学共通テストの受験上の配慮は、厳密には合理的配慮とは言えない要素を含んでいるからである。
・前半の内容として、大学入学共通テストを取り上げたのは、聴覚障害学生が共通して経験している内容 であるからである。大学の支援制度等を取り上げることで、より聴覚障害学生が具体的に指導目的①について考えられることが期待される場合は、内容を適宜変更してよい。
・本講座の情報保障としては、手話通訳やパソコン通訳をはじめ、様々な手段を用意する。複数の手段を 用意することで、聴覚障害学生が指導目的②について考える際の手掛かりとなる。
・様々な聴力の聴覚障害学生が参加することによって、他者との比較や他者の考えに触れることができ、自分に合った「支援」の方法を多角的に考えられるようになると考えられる。そのため、できる限り複数人の聴覚障害学生が参加できるよう調整し、他大学との共同実施を検討してもよい。
過 程 |
学習活動 | 指導・支援内容 (留意事項及び配慮事項) |
評価の観点 |
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導 入 5 分 |
1.障害学生が学ぶにあたって、様々な「支援」がなされていることを確認する。 | 〇各大学で行っている様々な「支援」を示す。 | |
展 開 Ⅰ 15 分 |
2.「支援」制度の考え方について、大学入学共通テストの聴覚に関する配慮事項と創作事例をもとに考える。 | 〇大学入学共通テストの聴覚に関する配慮事項(令和2年度)を示し、この中から選択することで全ての聴覚障害者が必要な配慮(「支援」)を受けられるのか、問いかける。 〇右耳が全く聞こえず、左耳が60dB程度の聴力のAさん(創作事例)を取り上げ、Aさんが「座席を前列に指定」を選ぶだけだったら、どのような問題が生じるか問いかける。 ↑単に選択肢を選ぶだけでよいのか、考えさせる狙いがある。 →部屋の前方左側の席だと、十分に聞き取ることができない恐れがある。 〇大学入学共通テストの聴覚に関する配慮事項(令和4年度)では、座席位置に関する注釈が追加されたことを示し、「支援者」は障害者が自分に適した「支援」を申請できるよう配慮していることに触れつつ、それらはあくまで手助けであり、大切なのは障害者が自分に適した「支援」を考え申請することであることを伝える。 〇法律や文科省の文言を示し、確かに障害者が自ら考え申請する制度になっていることを確認させる。 |
〇大学における合理的配慮や大学入学共通テストの受験上の配慮は、相手によって決定されたり、示された選択肢の中から選んだりするものではなく、自分に適した方法を考え、申請する制度であることを理解する。 |
展 開 Ⅱ 35 分 |
3.自分に適した「支援」の方法を考えるために、必要となる情報は何かを整理する。 | 〇一般的な講義室での講義の事例を取り上げ、この講義において、自分に適した「支援」を考えるためには、どのような情報が必要になるか問いかける。 〇最初の約10分間は個人ワークとする。 〇その後はグループワークとし、必要と考えた情報について、意見を交換する機会を与える。 〇特にグループワーク時は、手話通訳、パソコン通訳等様々な手段で情報保障を行う。 ↑ワークを円滑に進めつつ、どの「支援」が自分に適しているか考えるきっかけを提供する狙いがある。 〇ワークの中身がある方向に傾いている場合は、適宜問いかけを行い、別な視点で考える機会を提供する。 例:自分に関する情報(聴力レベル、きこえの特性等)に話が集中している場合 →講義の情報について考えさせる問いかけ ・この講義室はどんな大きさなんだろう? ・何人くらい参加しているんだろう? |
〇合理的配慮などの「支援」について、自分にあった方法を考えるために必要な事項について整理する。 |
ま と め 5 分 |
4.3で整理した情報を改めて確認する。 | 〇自分に適した「支援」を考えるために必要な情報を整理させる。 |
・独立行政法人大学入試センター.受験上の配慮案内(PDF形式)(令和4年度)
https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/hairyo.html
・独立行政法人大学入試センター.受験上の配慮案内(PDF形式)(令和2年度)
https://www.dnc.ac.jp/center/shiken_jouhou/hairyo.html
作成:土田 悠祐(2021年)
編集:ろう者学教育コンテンツ開発取組担当