6月18日(水)に第6回ろう者学ランチトークを開催しました。
今回のテーマは「アイスランドのろう者事情と学会報告」です。本プロジェクト代表の大杉が講師を務めました。5月下旬に学会発表のため、アイスランドに出張し、学会発表の様子やアイスランドのろう者の状況について報告しました。
おかげさまで教職員・学生あわせて37名の参加者がありました。
アイスランドは北ヨーロッパの北極圏の近くに位置している島国です。今回の出張目的はアイスランドの首都レイキャビクで開催された「第9回言語リソース・評価会議(LREC)」における発表でした。言語リソース・評価会議とは言語の分析方法や評価方法に関する研究成果などを発表する学会となっており、今回の発表総数は700件以上に上ったそうです。
しかし、メイン講演やポスター発表には通訳を依頼したのにもかかわらず、ろう者・難聴者のための通訳者が配置されず、苦労したそうです。手話言語ワークショップには国際手話通訳がやっとつきましたが、ポスター発表の際は英語による筆談でコミュニケーションをとらざるを得ず、大変だったとのことです。
今回は、ろう者同士の手話による会話のコーパスをELANというソフトウェアを使って分析し、その結果を発表しました。例えば「アニメ」の手話がわからない時に「アニメの手話、何?」と相手に聞いて、相手が表した手話をコピーして表現し直すという、音声言語の会話とは異なる手話言語特有の現象が見られるなどを説明しました。
学会の合間には、同じ首都レイキャビクにあるアイスランドろう協会、通訳派遣を行っているコミュニケーションセンター、手話通訳学科があるアイスランド大学などを訪れ、アイスランドの手話に関する現状を視察されたようです。アイスランドの人口は32万人ほどで、そのうちろう者・難聴者は350人と少なめですが、アイスランド手話が国語として認知されています。英語の普及に伴い、アイスランド語を守ろうとする国民の支持を得て、アイスランド語とアイスランド手話を国語とする法案を提出し、2011年に国会で承認された背景があるようです。このようにアイスランドのろう者の状況について紹介しました。
学生たちにとっても、もし将来研究者になった場合、学会などで発表するときにどのような工夫が必要なのか、また海外出張のときに通訳の問題をどう解決するのか、色々考えさせられた内容だったのではないかと思います。
参加して下さった皆様ありがとうございました!!