7月2日(水)に第7回ろう者学ランチトークを開催しました。
今回のテーマは、昨年度(※)に引き続き「デフアート」シリーズの3回目「欧米のデフアートの作品」です。本プロジェクトスタッフの管野が講師を務め、デフアート作品の鑑賞を通して1980年代から現在までの欧米におけるデフアートの変遷について紹介しました。
※デフアート①、②の内容はこちら
① → http://www.deafstudies.jp/info/news0011.html
② → http://www.deafstudies.jp/info/news0020.html
おかげさまで教職員・学生合わせて26名の参加がありました。
はじめに、アメリカでデフアートが発展した経緯についてお話ししました。19世紀から多くのろう画家が活動していましたが、1972年にBetty G. Millerがギャロデット大学で開いた展覧会で展示された「社会的な抑圧に対するろう者の苦しみ」を表現した作品が、当時のギャロデット大学の教職員や学生、ろう者コミュニティに衝撃を与え、大きな反響を呼びました。後のデフアーティスト達にも影響を与えたことから、その展覧会が初めてデフアートをテーマとした展覧会として位置づけられています。
また、1989年に、デフアーティスト9人により、デフアートの定義について検討がなされ、「デフアートはデフアーティストが創った作品全てを指す」ことから区別化を図るために「De’VIA」(「Deaf View/Image Art」の略称)という言葉が生まれました。すなわち、De’VIAとは「ろう者としての経験を反映した芸術」であると定義され、これが今日のアメリカにおけるデフアートに対する見解のスタンダードとなっています。
続いて、欧米各国の様々なデフアート作品を観賞し、描かれた背景やテーマなどについて解説しました。1980年代から2000年にかけては目や耳、口そのものをモチーフにした作品が多く創られましたが、2000年以降は手話への抑圧に対するろう者としての苦しみや葛藤を表現する作品や、家族内のコミュニケーションやろう教育のあり方を指摘する作品など以前のように直接的なモチーフではなく象徴的に描かれているまたは創られている傾向にあります。さらに「手話やろう者に対する抑圧への反抗」を表現するもの、「ろう者である自分への受容と誇り」を表現するものなど、テーマも多様化してきています。最後にまとめとして、デフアートは国が異なっていても共通する部分・テーマが多く、デフアートを通してろう者としての経験は世界共通であることがわかることをお話ししました。
参加して下さった皆様、ありがとうございました!!