7月16日(水)に第9回ろう者学ランチトークを開催しました。
本学産業技術学部の米山文雄先生にお越し頂き、「手話表現を取り込んだ教科教材について ~ろう幼児、生徒にとって必要なライブラリの準備を進めるために~」についてお話し頂きました。
おかげさまで教職員・学生合わせて29名の参加がありました。
教材開発に興味を持つようになったきっかけは、平成15年に本学が筑波技術短期大学だったときに企画された北欧研修旅行でした。フィンランド、スウェーデン、デンマークの3ヵ国を訪れ、国立の特殊教育教材研究所(SIH)のオレブロ支所を見学しました。そこではろう学校と連携し、聴覚障害児のためのデジタル教材が多く開発されていることに感銘を受けたとのことです。特にそこで手に入れた、スウェーデン語とスウェーデン手話をリンクさせたソフト「LINK IT」が手話による教材開発に興味を持つようになったきっかけだったと話します。
当時、聴覚障害児を対象とした教材の研究・開発がきわめて少ない状況でした。ろう学校(特別支援学校)においても、物語の手話ビデオや手話DVDが国語の教科書の補助教材として一部利用されているのみです。教員も手話付きの教材を作りたくても忙しくて時間がない、もしくは知識や技術がない等の現状もありました。
初めに「LINK IT」を参考に、「日本語 - 手話リンク教材」を開発しました。例えば、「大きなかぶ」のストーリーを基に表現された日本語の文章と挿絵、手話の画面を同時に見れるよう画面設定を選択することができ、文章をクリックするとリンクされた手話の画面が表示されるようになっています。自分のペースで手話を見ながら、日本語の文章を同時に確認できるというものです。
生活手話絵本DVD「こどものくらし」は、聴者の親が子どもと一緒に見ながら楽しめるために、一日の生活に使われる生活用語と一年の行事に使われる生活用語を取り上げており、絵、日本語単語、手話表現を提示操作できるように開発したDVDです。生活用語を手話で表すだけではなく、その用語の使い方や場面についての手話による解説も載っています。親子のコミュニケーションのきっかけ作りになるだけでなく、学校における指導や手話学習にもできると好評だったため、iPad版も開発したとのことです。
また、手話表現とリンクさせた教科書を授業で活用したいという教員の要望から「社会科手話リンク教材」「保健体育科手話教材」を開発しました。教科書のページをマウスで拡大・縮小でき、段落をクリックすると、その段落内容を手話で解説した動画、また、オレンジの下線部がひいてある単語をクリックすると、手話による用語の解説動画が出てきます。授業で活用するだけではなく、先生自身も手話による指導の参考にできるという利点もあります。4年に一度の教科書の改訂に伴う教材の作り直しや教科書の著作権により家庭学習等に生かすことができない問題があるため、教科書を使用しない補助教材のひとつとして年表に手話表現をリンクさせた歴史教材「日本史年表手話リンク教材」も開発中です。
このように今まで開発してきた教材を紹介していただいた後、「もっと全国のろう学校教員や保護者、生徒等がこれらの教材を閲覧できるような環境を整えていきたい」と今後の目標についてお話しして下さいました。プログラミング等を学んでいる学生も多いので、大変ためになるお話だったのではないかと思います。
参加して下さった皆様、ありがとうございました!!
生活手話絵本「いちにちのくらし」と「いちねんのくらし」のiPad用は無料でダウンロードできます。App Storeで「手話」や「生活絵本」と検索すれば出てきます。
※iPad用ですので、iPhone、iPod Touchではダウンロードできません。ご注意ください。