平成26年度第12回ろう者学ランチトーク:ロバート・ニコルズさん

2014/11/12掲載

 11月11日(火)に第12回ろう者学ランチトークを行いました。

 アメリカからロバート・ニコルズさんにお越し頂きました。講演テーマは「デフ・アーツ・ミュージアム・センター - 博物館及び美術館の新しい展開、感覚デザイン、文化、コミュニティから見たキュレーターの役割 -」です。

 おかげさまで教職員・学生合わせて28名の参加がありました。

 ニコルズさんは病気で失聴し、一般の学校に通い、コーネル大学で建築を学びました。コーネル大学大学院で修士号を取得後、自分の会社を立ち上げ、建築家として21年間、建築の仕事に携わってこられました。今回は「ろう者のための美術館」についてお話し頂きました。

 ろう者は聴者とは身体の使い方や感覚が異なるため、デザインにおいても新しい考え方や工夫が必要になります。美術館のキュレーターもそのことについて知っておく必要があるといいます。

 ろう者向けに設計された美術館が、全ての人々が利用できる美術館になるためにはどんなデザインが求められるのかー。大事な5つのポイントとして照明、視覚的情報、空間の対照性、伝わる要素、建築的解決性などが挙げられるといいます。

 照明の場合は、天窓や人工照明、窓の構成等、考慮した上でデザインする必要があります。例えば、自然光を取り入れるために天井の中央に天窓を配置したKimbell Arts Center、天井一面に大きい天窓を配置し、自然光をたっぷり取り入れたワシントンDCのナショナル・ギャラリー・オブ・アート、古い駅を改装した際に古い窓や天窓をそのまま使用して自然光を取り入れたパリのオルセー美術館等、良い例をいくつか例示しました。

 美術館内に手話通訳者を配置するときも、通訳者の服も壁とのコントラストに注意して手話が見やすいように色を選択したり(壁が白い場合は黒系の服等)、絵画と重ならないように少し離れて通訳したり等、様々なポイントがあります。また、触って感じる補助道具、手で触れることができる彫刻、絵画をコピーした触図など、盲ろう者向けのサービスも大事になります。

 自分が設計に関わった美術館(ギャラリー)のデザイン研究プロジェクトについても紹介して下さいました。ろう者がどういう空間か一目で判断できるように見やすい空間を心掛けて設計したそうです。また、ろう者同士、会話する時に手話を使用するため、スペースを広めに取る等、工夫しなければなりません。そして視覚情報を大切にしているため、室内が暗くならないように自然光をたっぷり取り入れられる設計も重要だといいます。

 実際にプロの建築家として建築のお仕事をされている、またはユニバーサルデザインに関わっている方のお話を直接伺うことができ、大変興味深い話でした。ろう者にとって居心地の良い、使いやすい空間とは何か、そしてユニバーサルデザインとは何かと考えさせられたのではないでしょうか。

 参加して下さった皆さま、ありがとうございました!!

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