12月10日(水)に第13回ろう者学ランチトークを行いました。
国立情報学研究所から坊農真弓さんにお越し頂きました。講演テーマは「手話の相互行為分析とは」です。
おかげさまで教職員・学生合わせて31名の参加がありました。
坊農さんは神戸大学大学院で博士号を取得されており、様々な研究所に勤められた後、現在は国立情報学研究所コンテンツ科学研究科系の准教授として音声会話・手話会話のインタラクション研究に携わっておられます。2000年から手話の勉強を始められたそうです。
言語学は統語論、意味論、語用論の3領域があり、語用論は言語使用、ことばと社会、日常会話など言語の使い方について研究する学問であり、坊農さんはその中でも「相互行為分析」を取り上げて話されました。
大杉と共同で研究を進めている「日本手話話し言葉コーパスプロジェクト」についてもご説明頂きました。ことばをたくさん集めたデータベースに言語学的な情報をつけたものをコーパスといい、「日本手話話し言葉コーパスプロジェクト」では、まず地元のろう者にご協力を頂きながら、対象者の手話表現を撮影し、これらの映像データを、その手話の品詞など様々な情報をつけていくアノテーション作業を行い、分析していきます。最終的には全国各地から手話表現の映像データを集めた手話言語コーパスを目指すそうです。
ろう者同士の会話によく見られる特徴として、2種類のマウジングがあり、音声言語の口形を借りるだけではなく、「パ」「ポ」などのマウスジェスチャーがあるなど、ろう者特有のルールがあるそうです。
また、会話の中においては視線や指名等、次の話者を決めるルールが自然に確立されていますが、ろう者同士の会話の場合、一方が話している最中、もう一方がミラー(相手の手話を真似る)を行う、またはうんうんと相槌を打つなど、相手が話している間も手を動かしている動作が見られ、話者の発言の助けになっているのではないか、その可能性について分析中だと話して下さいました。
これからも手話会話のメカニズムを解析していきたい、そして言語使用・コミュニケーションの研究を発展させていきたいという坊農さん。これからも益々のご活躍をお祈りしています。
自分たちが使用している手話について言語学的に分析していらっしゃる研究者から興味深い話を聞くことができ、とても良い機会だったと思います。普段手話で話していますが、その中にお互い無意識に確立されている言語的なルールの下、会話を交わしていることがわかり、新鮮でした。以後、そのメカニズムがどのように解析されていくのか楽しみですね。
参加して下さった皆様、ありがとうございました!!