1月23日(金)に第15回ろう者学ランチトークを行いました。
今回は飼料畜産中央研究所(茨城県つくば市)の繁益陽介さんにお越し頂きました。講演テーマは「畜産の世界へようこそ」です。
おかげさまで教職員・学生合わせて23名の参加がありました。
兵庫県出身大阪育ちで、食に関心を持っていた繁益さんは近畿大学農学部に進学し、食品栄養学を学びます。そして、JA全農(全国農業協同組合連合会)飼料畜産中央研究所に就職して20年目になります。
人にとって食とは何でしょうかー。繁益さんは参加者に問いかけました。食品は人が食べるための品物、動物が食べる物は飼料(しりょう)だと説明します。畜産とは飼料を与えて飼育し、畜産物や生体などを売ることで収入を得ることを目的とした産業です。別名、飼育産業といい、畜産物を生産するための家畜、そしてペット用の愛玩動物にわけられます。畜産業界では、鶏、豚、牛、ウサギ、犬、羊、馬、魚、猫、山羊、虫などの生き物を扱います。
現在、平均身長が昔より高くなってきていますが、縄文時代、弥生時代、古墳時代、鎌倉・室町・江戸時代のうち、1番身長が高かったのは、古墳時代だそうです。何故なら675年殺生禁止令が出され、五畜(鶏、豚、牛、犬、馬)を殺して食べることが禁じられました。そのため、殺生禁止令が出される前の古墳時代が一番高いそうです。肉を食べない習慣が長く続いた結果、江戸時代が一番低くなっているとのことです。明治4年に、欧米に追いつこうと牛肉や豚肉を食べ始めた事で平均身長が再び高くなったことを話してくださいました。
また、江戸時代、農民は一番低い地位と見なされてきました。その地位向上のために、二宮尊徳や大原幽学が農業指導者として仕法(マニュアル)の作成や農家の組織化(先祖株組合)の構築を図ることによって、農家の環境を改善しようと働きかけました。それが現在の農業協同組合(JA)の土台となり、市町村単位JAをサポートする県単位JAで、さらにサポートするのがJA全農です。
繁益さんは、JA全農に入会し、飼料畜産中央研究所にて飼料の品質研究をしておられます。今回は、養豚研究室についてご紹介頂きました。食べやすく、安全で美味しい豚を育てるためには、飼料が重要となってきます。機械で個体毎の豚の体重を管理、飼料の量を調節して、またそのデータを蓄積・管理することによって、飼料の品質研究に役立てます。本人は飼料の開発にも関わった経験もあり、飼料を改善することによって農場で問題となる尿や糞の排泄量を大幅に減らす効果が得られるそうです。
生まれてから肉になるまでの流れの中に、飼育と肉の間には、「と殺」という家畜の命を断つ過程が生じます。皆さんがそれを目にする機会がなかなか無い為、肉を単なるモノとしか見れなくなったように思います。牛のと殺の場合、まず牛に電気によるショックを与え、血を抜くことで命を絶ち、個体を吊るし下げ、皮を剥ぎ、内蔵や胃の内容物を取り除き、検査に合格した個体が解体され、スーパーマーケットに「肉」という品物として流通するのです。かなりショッキングな風景だそうです。繁益さんも、初めて実際に目にしたときは、気分が悪くなったことを覚えていると話します。
人間にとって食とは何かと、改めて問いかけました。食物連鎖の最終点は人間であり、多くの生き物の「命」を食べているということを忘れてはならない。残さない工夫をして全部食べ切る、そして「いただきます」「ごちそうさま」と手を合わせて命に感謝してほしいと大事なメッセージを投げかけてくださいました。
畜産業界の研究に携わっているろう者のお話を直に聞く事ができ、とても新鮮な内容でした。毎日必然的に向かい合っている「食」、そして「命」を毎日口にしていることについて、改めて考えさせられたランチトークでした。
参加してくださった皆さま、ありがとうございました!!