平成26年度第16回ろう者学ランチトーク:堀米泰晴さん

2015/02/02掲載

 1月28日(水)に第16回ろう者学ランチトークを行いました。

 今回は本学卒業生の堀米泰晴さんにお越し頂きました。講演テーマは「聴覚障害者の就業とろう協会活動 ~卒業生の立場から~」です。堀米さんは、本学(前・筑波技術短期大学第5期生)の卒業生で、民間企業で長年働いた経験をお持ちで、現在は群馬県の聴覚障害者提供施設の職員として勤めておられます。

 おかげさまで教職員・学生合わせて23名の参加がありました。

 3歳の時に失聴した堀米さんは、幼稚部から高等部まで新潟県立長岡聾学校に通い、卒業後、筑波技術短期大学に入学しました。筑波技術短期大学は真面目で優秀な学生が全国から集まるというイメージを持っていたが、いざ入学してみると意外と今どき(?)の学生も多く、驚いたそうです。誰かのいたずらで寄宿舎の火災報知器が作動し、夜中に叩き起こされたことが何回かありました。デフファミリー出身の学生の積極さに圧倒され、カルチャーショックも受けました。また、飲み過ぎて二日酔いのまま翌日の試験に備えて勉強した失敗エピソードもあります。このように様々な経験を得られ、とても充実した学生生活だったと話します。技短で培った友情は卒業後も変わらず、今でも同窓生たちとの交流は続いているそうです。

 卒業後は三洋電機株式会社に入社し、半導体の技術開発に関わる業務に従事し、デバイスモデリング、アナログ素子等の特性向上のための技術開発に携わりました。

 職場に聴覚障害者は自分だけという環境で、電話ができないことをあらかじめ周囲に伝え、配慮してもらいました。重要な話は筆談をお願いしたそうです。記録として残しておけば、後で確認したい時に役立って安心できるからです。「筆談を面倒くさがる人も確かにいたが、会社の売り上げに貢献するという同じ目標を持った仲間であり、協力し合うことが大切というコンセンサスがある。遠慮せず、筆談を頼んでいいと思う。」とアドバイスされていました。

 半導体関係の資料やマニュアルが英語だったため、辞書を引いて苦戦しながら読み方を覚えていきました。業務で必要な専門知識として数学、物理学、電子工学などが求められ、本学にいた当時は全く意識しなかったが、実際に社会に出てみると、本学で学んだ知識が役に立ったと話します。「基礎が十分できていれば、様々な分野で応用が効くので、学生のうちにしっかり学んでほしい」ともアドバイスされていました。

 働き始めた当初、自分では資料収集しているつもりでも、デスクに向かっているだけで行動を起こしていない、仕事していないと見なされ、「給料泥棒と同じだ」と言われる等悔しい思いをしたこともありましたが、様々な大きなプロジェクトに関わり、周りの信頼を得ていったことで、自信を積み重ねていきました。

 同じ会社の寮にいたろうの先輩がろう協会の役員をしていたことがきっかけで、地元のろう協会の活動に関わるようになります。地域のろう者と関わる機会が増え、職場での悩みを相談できる相手が近くにいる環境があったからこそ、14年間会社で働いてこられたと話します。

 ろう協会活動を通して、行政や議会との関わりが増えたことでろう者に関わる様々な課題が見え、本腰を入れて解決していきたいと思い始め、会社の合併を機に、群馬県聴覚障害者情報提供施設に転職することを決意しました。現在は群馬県聴覚障害者連盟の事務局長としても活躍しておられます。

 「自分の障害を正しく受け止め、できないことを初めに説明することが大切。そうしないと言うタイミングを逃してしまう。そして、同じ境遇におかれる仲間と相談し合える場を作っていくことが大切」とメッセージを投げかけてくださいました。卒業生ならでの経験をお話し頂き、貴重なアドバイスをたくさん頂けたと思います。

 参加して下さった皆さま、ありがとうございました!!

※今年6月に堀米さんの地元・群馬県(前橋市)で全国ろうあ者大会が開催されるそうです。興味のある方はぜひ遊びにいきましょう。

 ・第63回全国ろうあ者大会inぐんま http://deaf-gunma.com/wp/

 これで平成26年度のろう者学ランチトークは終了です。また4月に元気でお会いしましょう!!

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