筑波技術大学平成26年度公開講座「手話スキルアップ講座」

2015/03/03掲載

 2月22日(日)に本学天久保キャンパスにて、筑波技術大学平成26年度公開講座「手話スキルアップ講座」が開講されました。今回の講座は手話による日常的な会話ができる手話学習者10名を対象に、ものの形や動き、道順や手順などの説明の読取りと表現のスキルアップをねらいとした構成でした。ろう者学教育コンテンツ開発プロジェクトで開発した教材もこの講座で使用されました。

 講座の進め方は、セッション毎にまず、単語確認を行い、映像の手話表現を読み取ってワークシートに解答を書きます。その答え合わせを行うとともに解説を行い、身につけるためのポイントを整理します。その復習として、新たなワークシートの問題を受講生のペア同士で表現し、読み取る練習を行う形で、進めました。

10:00~12:30 前半セッション「ものの形や動きを正確に表そう」

 セッション1では、まず様々なものの形(平面)の表現について、例えば、点、円、大きな円、線、3本並んだ線、細い線、太い線、×、ドーナツ型などの様々な形をどう表現するか、学習しました。そして、円形、正方形、長方形、三角形、星形などの表し方、さらに、それらの様々な形が横並び、または縦並びと並んでいる模様を説明する時にどう表すかもあわせて解説しました。ペア同士で実際に表現してみると表現が逆になってしまったりと、自分で表すのは良いが、相手に正確に伝わっているのか、振り返る良い確認になったと思います。

 次のセッション2では様々なものの形(立体)、例えば円柱、立方体、三角錐、円錐、魚、電車・新幹線の顔の形などの様々な立体をどう表現するか学習しました。例えば、「細い」「太い」の表現は頬のふくらみの違いで表現するなどのポイントも解説しました。ペアで実際に表してみると、「細い」「太い」の表現は読み取れるが、「短い」「長い」の表現が微妙に異なり、読み取りにくい、判断が難しいという声もありました。普段、意識しないところですが、それらの細かい表現ができるようになれば、表現の幅が広がりますね。

 セッション3では、様々なものの動きの表し方、例えば、ボールの動き、人以外の動物の動きなどについて学習しました。「ぶつかる」の表現においても、「物と物がぶつかる」、「人と車がぶつかる」では、表現が異なり、それらのポイントについても解説しました。最後に、ろう者学教育コンテンツ開発プロジェクトで作成した映像を活用し、映像の内容(写真は車がぶつかる内容の映像)をどう表現するかペアで話し合い、アイデアをたくさん出し合うことができました。正解は1つではないが、決まりのある表現と語順など文法的なパターンがあるということを学べたのではないか思います。

13:30~16:00 後半セッション「道順や手順の説明を正確に読み取ろう・表そう」

 後半のセッション1では、国旗の模様の説明表現を学習しました。まず、外の枠を表し、全体的な色を示してから、順番に形や色を表す、または、縦か横に三色、配置されている場合、順番に色を表すなど、様々な説明パターンを習った上で、ペア同士で練習してみました。皆さん、スムーズに表現されていました。

 セッション2では場所に関する情報を指差しの使い分けで説明する方法について学習しました。指差しにも様々な指し方があり、一般的な指し方、全体の指し方、特定の場所一点の指し方があります。難しいですが、指差しの使い方を使い分けることができれば、場所に対する自分の関わり方について微妙な違いを説明することができます。

 セッション3は、図解的な説明表現でした。例えば、「テストの成績がクラスで一番ビリだったが、逆転して1位になった」「手話通訳の割合が東京と大阪では東京の方が多い」「禁煙が必要と思う人と不要と思う人にわかれ、不要と思う人の中に分煙が良いという意見とどこでも吸ってもいいという意見にわかれた」など手話で表してみます。日本語の順番に手話で表すのではなく、図解をイメージして説明できるようにするといった狙いがあります。図解的なパターンについて、ポイントを解説し、それらをもとに、ペアでワークシートの問題を解いてみました。難しかったと思いますが、日本語で考えるのではなく、頭の中で視覚的にイメージを整理し、どの手話表現を使うか考える良いトレーニングになったのではないかと思います。最後に、今村彩子さんがYouTubeで公開している映像「彩さんの半熟目玉焼き」の内容をコンロの位置などに注意して手話で説明する表現を学び、講座の全てが終わりました。

 全体的に難しい内容だったと思いますが、皆さま真剣な表情で取り組んでおられました。表現ができた、通じたというときに嬉しそうな表情も見られました。また、もっと伝わりやすい表現は何か、どのように表現したらいいのかと積極的な質問も多くあり、受講生自身が理解に努めようという姿勢が見られました。

 指導面で様々な課題もありましたが、ろう者学教育コンテンツ開発プロジェクトで作成した教材も活かして、有意義な手話学習の場を提供できたのではないかと思います。これからも皆さまに楽しんで頂ける、わかりやすい講座の提供を目指してまいります。

 参加してくださった皆さま、ありがとうございました!!


 

 

講座で使用した映像例(制作:ろう者学教育コンテンツ開発プロジェクト)
 

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