筑波技術大学平成30年度公開講座「手話言語表現スキルアップ講座」

2019/03/25掲載

 2月3日(日)に本学天久保キャンパスにて、筑波技術大学平成30年度公開講座「手話言語表現スキルアップ講座」を開講しました。今回の講座は、手話言語による日常的な会話ができる手話言語学習者6名を対象に、習得が難しい分野とされる「類別辞構文」を中心にものの形や動き、指差しなどの説明の読み取りと表現のスキルアップをねらいとし、グループ活動の形で指導しました。ろう者学教育コンテンツ開発プロジェクトで開発している教材もこの講座で使用しました。

 講座の進め方ですが、セッション毎に、まず単語の手話言語表現の確認を行い、参加者1人ずつ映像の手話言語表現を読み取ってワークシートに解答を書いてもらいました。その答え合わせを行うとともに解説を行い、身につけるためのポイントを整理してもらいました。次に、今度は参加者にペアを組んでもらい、別のワークシートを用いてペア同士で手話表現し、読み取る練習を行う形で進めました。

10:00〜12:30 前半セッション「ものの形や動きを正確に読み取ろう・表そう」

 まず、導入ではCL(類別辞)構文について、手話言語表現における決められた手順【形→大きさ→場所(配置)】を守って表現すると分かりやすいということを説明し、皆で基本を確認してから、セッション1〜4に進みました。

 セッション1では、まず様々なものの形(平面)の表現について、例えば、点、円、大きな円、線、3本並んだ線、細い線、太い線、×、ドーナツ型などの様々な形をどう表現するか、学習しました。そして、円形、正方形、長方形、三角形、星形などの表し方、さらに、それらの様々な形が横並び、または縦並びと並んでいる模様を説明する時にどう表すかも合わせて解説しました。ペア同士での表現ではどのペアもスムーズにできたようでした。自分では表すのは良いが、相手に正確に伝わっているのか、振り返る良い確認にもなったようです。

 セッション2では、様々なものの形(立体)、例えば、円柱、立方体、三角錐、円錐、魚、電車・新幹線の顔の形などの様々な立体をどう表現するか学習しました。例えば、「細い」「太い」の表現は頬の膨らみの違いで表現するなどのポイントも解説しました。実際にペアで表してみると、「細い」「太い」の表現は読み取れるが、「短い」「長い」の表現が微妙に異なり、読み取りにくい、判断が難しいという声もありました。普段、意識しないところですが、それらの細かい表現ができるようになれば、表現の幅は広がりますね。

 次に、応用として積み木を使って指導を行いました。ペア同士で、片方が見えないように表示された写真と同じように、積み木の形、配置を表現し、もう片方がそれを読み取って写真通りに正確な配置をすることができるかを練習しました。相手が表現する右、左をそのまま表現された場所に置く人が殆どで、写真が示す左右の配置が実際は逆になることが多く見られました。相手が示す右、左は自分にとっての右、左と同じなのだと、改めて読み取り方についても確認をしました。

 セッション3では、様々なものの動きの表し方、例えば、人以外の動物の動きなどについて学習しました。動画が表現する手話言語を日本語にどのように変換ができるかということをペアで確認、発表を行い、ろう者ならではの表現ルールがあることを確認しました。

13:00〜16:00 後半セッション「図表の内容を正確に読み取ろう・表そう」

 後半の初めに、動画が表す内容をどのように表現できるか、前半のセッション3の応用としておさらいをしました。その例の1つとして、「人形の足に横から来た白いボールがぶつかった」という内容をどのように表現できるかというということをペアで考えるということをしました。「鉛筆」「人形とボール」「車」それぞれ、主語が人以外となった場合の表現方法について確認を行いました。

 後半のセッション1では、国旗の模様の説明表現を学習しました。色や濃淡の手話言語の確認を行ってから、表現方法についての説明に入りました。まず、外の枠を表し、全体的な色(濃淡も含めて)を示してから、順番に細かい形や色を表す、または、縦か横に3色配置されている場合、順番に上からまたは左から色を表すなど、様々な説明パターンを習った上で、ペア同士で練習してもらいました。中でも、フィジー共和国の国旗のように紋章が入っているものもあり、どう表現しようか頭を抱えながらも一生懸命に伝えようとする様子も見られました。

 セッション2は、場所に関する情報を指差しの使い分けで説明する方法について学習しました。指差しにも様々な指し方があり、一般的な指し方、全体の指し方、特定の場所一点の指し方があります。他と比較している「〜には(〜に)」とその場所に限っている「〜は(〜が)」の指差しの使い分けに難しいとの声が多く、表現に苦労する様子が見られました。難しいですが、指差しの使い方を使い分けることができれば、場所に対する自分の関わり方について微妙な違いを説明することができます。

 セッション3は、図解的な説明表現でした。今回は「手話通訳者の数」「日本の一年間の降水量」「免許証の有無」「社内での提案の流れ」「テストの成績」「卓球のランキング」の6つのテーマについて、手話言語表現の動画を読み取り、それをワークシート上で図や日本語に変換することをしました。最後は、難しかったと思いますが、日本語を考える前に、頭の中で視覚的イメージを整理し、どのような表現を使うとより鮮明に伝わるか考えることで、良いトレーニングになったと思います。

 全体的に難しい内容だったと思いますが、慣れない表情を上手く使って何とか伝えようとする参加者の真剣なお姿が印象的でした。受講後、「適切なアドバイスをいただけた」「もっと数回開催してほしい」「とても濃密で贅沢な時間だった」との感想をいただきました。

 指導面で様々な課題もありましたが、ろう者学教育コンテンツ開発プロジェクトで作成した教材も活かして、有意義な手話学習の場を提供できたのではないかと思います。これからもより多くの方々に楽しんでいただける、分かりやすい講座の提供を目指してまいりたいと思います。

 参加してくださった皆さま、ありがとうございました!!

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