自立活動「みんなが手話で話した島」学習指導略案

1 対象

聴覚障害学生(中学生)

2 指導の形態

通常の教室(45分〜50分)
一斎授業

3 指導の目的

1)マーサズ・ヴィンヤード島の実例を知る。

2)聴覚障害の「障害」はコミュニケーション面での支障、またはマイノリティに起因するものという 1つの捉え方を知る。

4 指導にあたって

・スライドの資料を配布し、それに自身の考えを書き込むことでノートの代わりにする。

5 本時の展開


学習活動 指導・支援内容
(留意事項及び配慮事項)
評価の観点


5
デフコミュニティについての定義を知る。 【デフコミュニティの定義】
ろう者の文化的集団

【ろう文化】
手話を基礎とし、聴覚でなく視覚、触覚を重視する生活文化を指す。

【補足】
右のイラスト:声で人を呼ぶ様子。聴者がよく使う人の呼び方。
左のイラスト:肩を軽く叩いて人を呼ぶ様子。ろう者がよく使う人の呼び方。
特になし


25
聴覚障害とはどういうことか考え、資料に書き込んだのち、意見を発表する。 「聴覚障害とはどういうことだろう?」と問いかける。
マーサズ・ヴィンヤード島のデフコミュニティについての説明を聞く。 マーサズ・ヴィンヤード島の地図を見せる。


島では300年以上にわたり、遺伝性の聴覚障害が原因で先天性のろう者が多く生まれたと説明する。
【補足】
アメリカ合衆国の聴覚障害者の割合は5730人に1人。ヴィンヤード島では、全体で155人に1人。ある地区では4人に1人。
作者「アイゼイアとデイヴィッドについて、何か共通することを覚えていますか」
老婦人「もちろん、覚えていますとも。二人とも腕っこきの漁師でした。本当に腕のいい漁師でした」
作者「ひょっとして、二人とも耳がきこえなかったのではありませんか」
老婦人「そうそう、いわれてみればその通りでした。お二人とも耳が遠かったのです。何ということでしょう。すっかり忘れてしまうなんて」
このやりとりについて、なぜ老婦人が、アイゼイアとデイヴィッドについて聴覚障害であることを忘れてしまったのか考え、意見を発表する。
「はたからは、とてもつんぼには見えませんでした。あの辺りの住民は、まるで空気のように、特別どうこうと意識してなかったのです」
「何人かが集まっていて、その中にろう者がいるとき、そのろう者は話し合いの輪に加わるのも、冗談や話題についていくのも、まったく意のままにできました。いつも一座にとけ込み、仲間はずれになることなど、いっさいなかったのです」という島民の声を紹介し、島民は皆、幼少時から英語とともに手話を習得し、聴覚障害者とのコミュニケーションには全く困らなかったことを説明する。
【留意点】
「つんぼ」という言葉について、ろう者を指す言葉だが、今では差別用語なので使わないように注意する。
マジョリティとマイノリティの言葉の意味を確認する。 マイノリティの例にLGBTを挙げるが、生徒の実態(既習かどうか)に合わせて調整すること。
【補足】
マジョリティ:集団中の多数派
マイノリティ:集団中の少数派

日本の場合、聴覚障害者はどちらに入るか、また聾学校やマーサズ島ではどちらに入ると思うか発問する。
マーサズ・ヴィンヤード島の様子を聞いて、「聴覚障害とはどういうことか」を再考し、資料に書き込んだのち、意見を発表する。 キーワードとして、「マジョリティとマイノリティ」を挙げる。
教師の説明を聞く。 私たちが障害者として生きているのは体に欠陥があるというよりはマイノリティだからであるという考え方もできると伝える。

「共同体が障害者を受け容れる努力をおしまなければ、障害者はその共同体有益な一般構成員になり得るということであろう。万人に適応するために、社会は多少なりとも、自発的に変わっていかなければならないのである。」という一文について生徒の実態に応じて噛み砕きながら説明する。



5
教師の提示した「共同体が障害者を受け容れる努力を〜」という文章や、マーサズ・ヴィンヤード島の例を聞いて、考えたことを発表する。 日常生活で障害を感じることがあればそれは自分の体の欠陥のせいではなく、社会に起因するものだと伝える。社会を批判するのではなく、社会や個々の意識を変えていくことを諦めないことが重要だと伝える。

6 参考文献またはWebサイト

「みんなが手話で話した島」
 http://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/book/2220n.html

作成:下森 めぐみ(2021年)
編集:ろう者学教育コンテンツ開発取組担当

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